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2013.01.13(Sun):謎解き
テレビで流れる正月特番にも飽きてきた頃、今日から僕の通う小学校も3学期が始まった。

クラスメイトが「お雑煮美味しかった」「紅白を最後まで観た」といった声があちこちで上がる中、「親戚から合計10万円もらった」という猛者まで現れた。 小学2年生にしては、いささか不相応な感じが否めないが。

このお年玉、僕は未だかつて貰ったことがない。というのも、僕には両親がいないからだ。
今は父方のおじいちゃん、おばあちゃんの家に3人で暮らしている。
一度、二人に「何で僕にはお父さん、お母さんがいないの?」と訊いたことがあるが、「国連の職員で、今はジャングルにいる」や「両親ともに自分探しの旅に出た」と言ってお茶を濁してばかりだったので、諦めた。 おそらく、どこかで生きてはいるんだろう。

物心ついた時には既におじいちゃん、おばあちゃんと暮らしていたので、僕には両親の記憶というものが皆無だ。お年玉という風習も、小学校に入って初めて知った。
そこで去年のお正月、おじいちゃんに「お年玉、僕ももらえるの?」と訊いたが、普段風邪のひとつもひかないおじいちゃんが急に咳をゲホゲホしだして、「すまないが、年金暮らしの身にはそんな余裕もなくてな。 来年から消費税も上がるし」と、切ない事を言い出した。そんなおじいちゃんの歯にはプラチナが輝いている。
その場にいなかったおばあちゃんにも、きっとおじいちゃんから根回しがされるだろうから、二人からお年玉をもらうのを泣く泣く諦めた。

そんな回想をしながら帰宅すると、玄関に知らない女の人がいた。
おじいちゃんかおばあちゃんの知り合いかな?と、僕が声を掛けると、女の人は僕を振り返って驚いた表情を見せた。
「もしかして、タカシ・・・君?」ちょっと低めの声で問いかけてくる。
女性にしては長身で、168cmのおじいちゃんより若干高いくらい。白いワンピースに、高そうな毛皮のコートを羽織っている。首にはピンクパールのネックレスを付け、 足元はワンピースの色と同じく、白いハイヒールという出で立ちだった。女性の年齢は分かりづらいけど、その女の人は同級生の親達と一緒くらいに見える。ほっそりした顔はなかなかの美人だ。

ところでこの人の顔、どこかで見たことある様な気がする…。
「はい、そうです。どちら様ですか?」と、僕は問いかけた。これは当然の質問だろう。
ところが、その女の人は僕の質問に答えずに、笑顔になって僕に白い封筒を差し出してきた。

「大分遅くなっちゃったけど、これアナタにあげるね」
受け取ってみると、名刺よりも一回り大きい糊付けされた封筒だった。一見何の変哲もないが、宛名を書くところにこんな言葉が書いてある。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
始まりは「巳」の時
ヘビ・ヒツジ・ニワトリ・リュウ・ウシ

1:ポ
2:ー
3:チ
4:ラ
5:ブ
6:レ
7:タ
8:ー
9:ロ
10:ウ
11:ソ
12:ク
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

意味が分からない。混乱する僕に、女の人が「その問題を解いたら、封筒の中身がきっと分かるはずよ」と言ってきた。知らない人にいきなり謎を出される僕の人生は、これからどうなるんだろう?

僕はもう一度その文章に目を落とした。正月休み明け早々何をやらされるんだ、僕は?
待てよ・・、この動物達に12までの数字。そうか、そういうことだったんだ。






これは十二支の干支を表すものとは、小学生の僕でも分かる。
そして「ヘビ・ヒツジ・ニワトリ・リュウ・ウシ」となっているので、各動物に該当する数字をピックアップし、その数字に当てはまる文字を選べということだろう。
干支は「子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥」であり、通常は子が1、亥が12となる。
ここでポイントは始まりが「巳(み)=ヘビ」の時となっていることだ。
巳が始まり(=1)となると、午が2、未が3、そして最後に辰が12となる。 つまり「ヘビ・ヒツジ・ニワトリ・リュウ・ウシ」は「1・3・5・12・9」となり、
その数字に該当する文字は「ポ・チ・ブ・ク・ロ」。そう、「ポチ袋」となるのだ。

この封筒がポチ袋ということは・・・。
慎重に封を開けてみると、そこには折り畳まれた1枚の千円札が入っていた。
「こ、これって」
「そう、お年玉よ。遅くなって本当にごめんなさい」
女の人の目は少し潤んでいたが、優しい笑顔を僕に向け、ふいに僕を抱きしめてきた。
その時、僕の頭には赤ん坊だった僕を両腕で抱っこしている母親の姿が浮かんできた。
どうしてこんな情景が・・・。

「もしかして、お母さ・・・」
ドサッ、という大きな音が僕の背後から聞こえてきた。振り返るとおじいちゃんがいた。
どうやらスーパーの買い物を終えて帰ってきたところのようだ。落ちたビニール袋から、大根やネギが見える。
おじいちゃんは、これでもかという程目を大きく見開いて口をパクパクさせている。金魚そっくりだった。
「おじいちゃん、あのね。お母さんが、お母さんが帰ってきたんだよ!」
だが、おじいちゃんの耳に僕の声は届いていなかったようだ。ようやく声を出せる状態になったおじいちゃんはこう言った。

「ヒ、ヒロシっ!?」

あぁそうか、この女の人どこかで見たことあると思ったら、おじいちゃんに似ていたんだ。


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